ツバキでも寒椿でもサザンカでもない、ユキツバキ。

ツバキ科の植物には花も似ているし、名前も紛らわしい種類が沢山あるものです・・・・

今回はユキツバキについてのお話です。

ユキツバキの特徴

ユキツバキはツバキ科ツバキ属の常緑低木で日本固有種です。

オクツバキやサルイワツバキ、ハイツバキなどという別名もあります。

主に日本の太平洋側に分布するヤブツバキが東北地方から北陸地方の日本海側の多雪地帯に適応したものと考えられています。

ブナ林の林床などに自生していて、エゾユズリハやヒメモチ、ヒメアオキ、ツルシキミなどと一緒に見られます。

 

幹の高さは1~2mほどになり、葉は枝に互生し、短い葉柄があります。

葉の形は楕円形で先端は鈍り、緑はヤブツバキに比べて鋸歯が鋭くなっています。

樹形は冬の間、重い雪に押しつぶされている状態なので、地を這うような形になっていますが、雪が解けると次第に立ち上がってきます。

ユキツバキの花

ユキツバキは4~6月に咲きます。

花の大きさは8㎝程度で5枚の薄い花びらがあり、水平に大きく開きます。

 

雄しべの花糸はくっついておらず、濃橙黄色から黄赤色になります。

林床に自生するものは花付きが少なく、一枝に複数個程度ですが、林縁部ではより花数が多い株も見られます。

稀に白花のものもあります。

紛らわしいユキツバキとヤブツバキ

ツバキは200種類を超える園芸種があり、庭や公園などでは頻繁に目にしている植物です。

しかし、野生種となると話は別。

 

日本に自生するツバキはヤブツバキとその変種と言われるユキツバキとヤクシマツバキの3種類だけなのだそう。

このうちユキツバキは先述した通りで、ヤクシマツバキは屋久島や沖縄に分布しています。

 

花や葉はほとんどヤブツバキと変わりません。

サザンカも仲間で花などがよく似ていますが、花の散り方が違うというのは有名な話。

 

ヤブツバキは常緑の低木~小高木で高さは5~6mほどになり、時に10m近くになると言われています。

本州以西の日本各地から朝鮮半島、台湾に分布していて、多摩丘陵には点々と自生しています。

 

よく枝を分けてこんもりとした樹形になり、幹は灰褐色で滑らかです。

早春から春にかけて5~7㎝程の赤色で5枚の花弁をつけ、漏斗型に開きます。

 

多数の雄しべがあり、花糸は白色で、葯が黄色なので目立ちません。

ユキツバキの花糸は黄色ですので、ここは大きな違いです。

 

葉は厚くて硬く、表面に光沢があります。

葉は互生していて、互い違いで大きさは様々です。葉先は鋭三角形で、葉縁には細かい鋸歯があります。

ツバキに関するあれこれ

日本においてツバキの花は古い時代から親しまれてきました。

日本書記や古事記にもその名前やツバキらしい花が表記されています。

 

万葉集には9つでツバキが詠まれ、それらはおそらくヤブツバキのことと考えられています。

 

16~19世紀になると日本や中国大陸などに自生していたツバキの仲間は西欧にもたらされ、品種改良によって多くの品種が作出され、文芸の分野でも取り上げられるようになり、「椿姫」などは有名なところです。

 

鎌倉時代に入ると日本ではツバキを彫った工芸品が多く作られ、1600年初頭には多くの園芸品種が作出されていて、江戸時代には品種改良が更に進みました。

種子を絞って得る椿油は高級食用油として、また整髪料や古い時代には灯などの燃料油としても利用されてきています。

 

ツバキの材は固く緻密で、摩耗に強く、擦り減らないことから印材、工芸品や細工ものに利用されます。

また、古い時代から目倍は日本酒の醸造や染色に利用されてきています。

葉からとった成分は止血剤に利用されたりもしています。

(ライター ナオ)