銀杏を生で食べるとはどういうことでしょうか。

そんな勇気のいる事はしたことがありません。だいたい臭いのではないですか。

 

そのようなことにただでさえ少ない勇気を使いたくはないし、銀杏は食べすぎない方がいい食品であるにも関わらずどのような事情があり銀杏を生で食べるという事になるのか、というような話です。

銀杏について

ごく普通に見かけるイチョウの樹は、謎が多い樹でもあります。

イチョウの樹は雌雄異株です。

銀杏をつけるのは雌株だけです。

中国が原産とされていますが、日本にいつ移入したかは不明のようです。

樹木としては丈夫で長持ち病気にも強いので、よく街路樹になっており紅葉の時期には多くの人たちが集います。

 

イチョウ目イチョウ科イチョウ属のイチョウですが、現存するのはイチョウ一種です。

化石が見つかることから古くからあった樹である事は分かっています。

樹の高さは30mにもなり、寿命が長いのも特徴です。また、樹が育つまで雄雌が分かりません。

 

4~5月頃に花には見えない花を咲かせます。

花粉は風に乗って運ばれうまく事が運べば秋には結実します。

 

不思議なのは雄株の花粉に精子のようなものを持つ事です。

その事実は明治29年に発見されたようですが、昔から植えられていながら仕組みについては不明な点が多いのです。

 

受精の様子はさながら人間のようでもあります。

そのメカニズムにイチョウが古代樹のように今もって現存している秘密が隠されているようで大変興味深いのですが、既に文章が長いので割愛します。

 

銀杏はイチョウの種子です。

オレンジ色の様な部分は外層で例の臭い部分です。

この外層部ですが、触ると痒みが出る事があります。

その中の硬い殻は中層で、更に薄い膜のようなものがあり、漸く銀杏が姿を現します。

銀杏の生食について

銀杏の生食に関しては、漢方において「銀杏(ギンキョウ)」と呼ばれ生食は去痰(痰をとり咳を鎮める)作用や飲酒による毒消しなどによい、などとされている事があります。

但し、そこでも問題になるのは食べすぎると中毒症状を起こす事です。

 

主に下痢や嘔吐、腹痛などが起こる可能性があります。

漢方で使用されることがあるとはいっても、漢方薬に精通しているわけでもないごく普通の素人がおもむろに生のままの銀杏を食べてしまう、というのは明らかに体及び胃腸に良くないでしょう。

 

確かに銀杏には各種ビタミン、カリウム、ナトリウムなどが含まれており健康に良いなどともされます。

しかし食べる量は多くはないので、結果としてそこまで健康効果はないのではないかと考えられます。

 

また、認知症に効果があるとされるイチョウの葉エキスが配合されたサプリメントも多数販売されています。

イチョウの葉は「銀杏葉(ギンキョウヨウ)」という名で漢方でも使われる事があるようですが、そこでも多量に摂取する事は推奨されていません。

 

総合するに、銀杏を生食は敢えてすることはないでしょう。

万が一病院に運ばれるような事態に陥った場合、どうしたのですか、と医師に問われたらぎんなんを食べすぎた、しかも生で、などと苦しみながら答えなければなりません。

これは非常に恥ずかしく且つ滑稽な状況ではないでしょうか。

 

薬とされるようなものは、度が過ぎると毒になる事も多くあります。

酒は百薬の長などともいわれますが、度が過ぎれば単なる二日酔いです。

銀杏の匂い

黄金色に染まる銀杏並木の下を見れば、あちらこちらに落ちている銀杏。

落葉に隠れて見えない事もあり踏むと臭いですね。

自分が踏んでいなくても、大人数が風流を求めて足を運ぶ銀杏並木は、多くの場合すでに銀杏の臭気にふんわり包まれています。

 

あの臭いの元は何であるのか、という事は銀杏を食すにあたり最も気になる事です。

ごく簡潔にいうと、あの臭いの元は酪酸とぺプタン酸というものです。

 

一番外側のオレンジの部分に含まれており、銀杏が熟した10月頃に一斉にその臭いは発散されます。

その臭気の為に、人間より嗅覚が発達した小動物は食べないのです。

 

ふと疑問に思うのは、銀杏の臭いの要因を徹底的に追及しそのメカニズムまで詳らかにしたとしても、銀杏の臭さは特に軽減されるものではないのではないという点です。

銀杏はもともとああいう臭さのものであり、この先も臭いのです。

 

そして臭いと言いながらも何故か食べており、しかも食べすぎる場合まであるという解せない状況です。

たとえ臭わない銀杏などというものが開発されても、人気が爆発するというものでもない気がします。

銀杏の漢字

「銀杏」は元は「ぎんあん」と呼ばれていたようです。

それがくっついて「ぎんなん」になったようですね。

イチョウの漢字も多くあり「鴨脚」「公孫樹」、どちらも中国由来だそうです。また、「銀杏」をイチョウと読ませる場合もあるようです。

銀杏の料理

銀杏を食卓に取り入れれば、料亭のような雰囲気を演出できます。

一緒に使う色どりの人参を、紅葉型にくりぬいたりするとなお雰囲気が出ます。

気分的に今夜は料亭だ、と思うような日があれば是非。

 

硬い殻のような部分が付いたままの場合、フライパンで空煎りします。

特にフライパンである必要はありません。

 

やや茶色になるまで煎りますが、銀杏は様々な方向に飛び跳ねますから、加熱された銀杏が飛んできても良いように、左手には鍋の蓋のようなものを持ちガードします。

頃合いを見て火を止めて冷ましてから殻を剥きます。

その後薄皮をつるりと剥きます。

  • 茶碗蒸しに入れる。

一人分につき、銀杏は1つが良いでしょう。

微量に余ったお豆腐や青菜を入れても良いですね。他、スイートコーンなども良いかも知れません。

 

  • 豆腐のあんかけの具にする。

これは高野豆腐でも試してみたいですね。

一皿につき銀杏は3つ程度が良い。

 

  • 串に刺して焼く。

キノコの炊き込みご飯などに添えます。

味噌汁もいいですが、この場合お吸い物も良いでしょう。

 

たくさん食べない為なのか、銀杏の調理のレパートリーは限りなく限られています。

しかしそれでいいのではないでしょうか。そっと秋の訪れを知らせる銀杏。

雰囲気の演出。それでこそ銀杏でしょう。

銀杏についての考察

よく分からないのは、加熱しても沢山は食べられない銀杏をいくら健康によいらしいからといって生で食べようとする心理状況です。

生で食べようとしている、という事もそうですが沢山食べればいいのではないか、と思ってしまうところが少し奇妙な気がします。

 

銀杏の匂いは時として「足の匂い」に例えられます。

そこまで臭い足を自分は知りませんし知りたくもないのですが、個人的に銀杏の臭いと似ている気がする食物は、青いパパイヤの香りです。

 

銀杏の時期になると、長い棒のようなものを巧みに操って枝を揺らし、銀杏を早く収穫しようとしている人を稀に見かけますが、銀杏は自然に落ちたものを拾う方がいいようですよ。

樹についている銀杏はまだ青く、食用には向きません。

 

結論として銀杏の生食は明らかに体に良くはないと考えられるが、どうしても食べたいのならそれは自由である、という事です。銀杏と名のつく食品を生で食べたいのであれば、銀杏草(ギンナンソウ)という海藻はいかがでしょうか。

 

北海道地方の北部である宗谷沖などでとれる、海藻の一種です。

どうですか、いかにも体によさそうではありませんか。

(ライター:おもち)