葛(クズ)は、マメ科・クズ属のつる性の多年草です。

日本では根を用いて食材の葛粉や漢方薬が作られています。

 

また、秋の七草としても有名です。

が、そんな葛がアメリカで大変な事になっているみたいです。

では、どうなっているのか、さっそく見ていきましょう。

アメリカで大繁殖している

葛は、1876年に初めてアメリカに持ちこまれました。

明治政府が、フィラデルフィア万国博覧会で日本館を出展したさいに、会場装飾として使用するためでした。

葛はそれをきっかけに、東屋やポーチなどの装飾として、アメリカで人気となります。

また、1920年代頃から、家畜の飼料としてもよく輸出されるようになりました。

そして1930年代には、河川の土壌をせき止めるためや、土砂流出を防ぐために利用され、またたく間に広がっていきました。

 

そして――。

アメリカは、そんな葛の増殖を制御できなくなりました。

現在では、3万平方キロにも広がっているといわれています。

ちなみに、3万平方キロという広さは、3万6000平方キロの九州よりも少しせまめ。

 

日本の総面積が38万平方キロなので、どれほどのエリアに葛が敷きつめられているかがイメージできると思います。

さて、そんなアメリカ人も制御できなかった葛ですが、いったいどんな植物なのでしょうか?

葛の生態

葛(クズ)は、マメ科・クズ属のつる性の多年草です。

つるを伸ばして広い範囲に根を下ろし、繁茂力が非常に高いのが特徴です。

 

かつて農村では、田畑の周辺に育つ葛のつるを作業用の材料に用いたため、定期的に刈り取られていました。

しかし、その刈り取りをおこたると、短期間であっという間に低木林をおおいつくしてしまいます。

葛はそれほど成長が早いのです。

 

また、伸び始めたばかりの樹木の枝に巻きつくと、それによって樹木の枝が曲がってしまいます。そのため、人工林においては、若木の生長を妨げる有害植物と見なされています。

葛は根茎により増殖するため、地上部のつるを刈り取っても地下に根茎が残り、すぐにつるが再生します。

 

抜本的に除去する方法としては、除草剤のイマザピルを使う手法が有効です。

これは薬剤を染みこませた楊枝状の製品で、根株に打ちこむことにより効果を発揮します。

 

なお、葛は温帯および暖帯に分布し、北海道から九州までの日本各地のほか、中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに分布しています。

世界の侵略的外来種ワースト100(IUCN, 2000)選定種の1つです。

荒れ地に多く、人手の入ったヤブによく繁茂します。

葛の季節

葛は多年草で、開花時期は7月、8月、9月です。

ちなみに花言葉は「思慮深い」です。

 

また、葛は、日本において古くから文化的題材として扱われてきました。

葛固有の小さな葉を意匠的に図案化した家紋が数多く存在します。

また、秋の七草のひとつに数えられるとともに、「秋の季語」として多くの俳句に詠われています。

葛のその他雑学など

葛といえば、葛根湯がおそらく有名ではないでしょうか?

葛の根を乾燥させたものは、生薬名葛根(かっこん)と呼ばれ、日本薬局方に生薬として収録されています。

 

葛根には、発汗作用・鎮痛作用があるとされ、漢方方剤の葛根湯、参蘇飲、独活葛根湯などの原料になります。

風邪や胃腸不良(下痢)のときの民間治療薬として、古くから用いられてきました。

薬用として用いる場合の採集時期は、初夏が望ましいでしょう。

葛のまとめ

以上、葛とアメリカについていかがでしたか?

アメリカに持ちこまれた葛は、ほとんど制御不能なまでに増殖して、手に負えない状態となっています。

ちなみに、葛のほかにもワカメやコイなどが海外でご迷惑をかけています。

 

日本に入ってくる外来種は、よくニュースになりますが、実は日本の在来種も海外で暴れまわっています。

これからは海外のニュースにも注目していきたいです。

(ライター ジュン)