縁日やお祭りの賑わいのなかからイカ焼きの香ばしい醤油ダレの匂いが漂ってくると、ついつい引き寄せられてしまいますよね。

 

刺身、イカの塩辛、イカの一夜干し、イカリング、イカ入りお好み焼き、イカ飯、パエリアなどなど、イカというと、ついついイカ料理を思い浮かべてしまいがちの筆者ですが、今回はイカ料理にとっては邪魔者扱いされることが多いイカの吸盤に注目します。

イカとはどんな生き物?

イカは背骨を持たない無脊椎動物で、軟体動物である巻貝や二枚貝など貝類の仲間です。

一見、イカに貝殻はないようですが、貝が進化(もしくは退化)したものが見られます。コウイカの「イカの甲」と呼ばれ、筋肉中の袋に包まれていて、「浮き」としての働きをしている部分は貝殼です。

ツツイカの仲間で筒になっている胴体の背中に通っているプラスチック製の骨のような「軟甲」という部分も貝殻です。

さらに、イカは10本の足をもっているのが大きな特徴ですが、イカの10本の足は頭から直接生えており「頭足類」に属しています。

イカの足は、腕なの?

イカには10本の足がありますが、足を腕という場合もありますよね。

10本のうち、長い2本を「触腕」ともいいますが、イカの10本の足もしくは腕は、動物学的には「足」です。

 

腕が2本、脚が2本の人間は動物的には4足動物であるのと同じです。

しかし、イカは10本の足を使ってエサを捕まえたり、メスを抱きかかえたりするので、習慣的には「腕」ともいえます。

ちなみに、イカの足のことを「ゲソ」ともいいますが、「下足」がその由来です。

イカは攻撃的な肉食動物!

イカの寿命はほとんどが1年です。クラゲなどと同じく海中をゆらゆら浮遊しているよひわな動物と思われがちですが、意外にも動きは素早く攻撃的な肉食動物です。

エサが現れると、腕を下方に下げ、両眼を寄せて立体視野を得て距離を測りじわじわ近寄り、触腕のリーチ範囲に入るとみるや目にもとまらぬ早業で触腕をのばしてとらえ、さらにほかの腕を動員して抱え込みます。

イカが活発に動ける秘密

イカは眼が高度に発達しているので、眼でエサをとらえるとただちに動き襲いかかることができます。

またイカには心臓が3つあります。

 

本来の心臓のほかに、エラの根本にエラ心臓が2つあり、このエラ心臓を使って活動に必要な大量の酸素を送り込みます。

この3つの心臓がイカの活発な動きを支えているのです。

 

さらに、イカの胴体(外套膜)は、筋肉質で伸縮自在のポンプみたいな働きをします。

胴体内に海水をとり込み、頭についている墨や排出物を出すロウトと呼ばれる管からウォータージェットのように水を噴出させるので、素早く泳ぐことができるのです。

イカの吸盤の秘密

さて、イカの吸盤ですが、筋肉でできたお椀型になっていて、内側に硬い角質リングがあり尖った歯のようなギザギザがついています。

そのギザギザでエサにしがみつくのです。

 

さらにイカの吸盤は、腕(足)に直接ついているのではなく、細長い柄の先についていて、エサが暴れても吸盤の柄が遊びとなりはがれにくくなっています。

一方、タコの吸盤は柔らかい肉質でできており、筋肉の動きで吸盤の中を真空にしてひっつきます。

ガラスやタイルにピタリと張りつくビニール製の吸盤と同じしくみです。

イカとタコの吸盤、どちらの吸着力が強い?

いままで見てきたように、イカの吸盤は、柄の先に吸盤がついている、いわばワイングラスのような形をしており、ワイングラスの口周りについている硬い角質でできた環内のギザギザの歯でかみついてひっかけるというしくみです。

 

タコの吸盤は、クレーターのような形をしており、中を真空にして吸い付きます。

ですから、「吸着」という面ではタコが “WIN!” といえそうです。

イカの吸盤を取り除く方法

イカの調理をするときに邪魔なイカの硬い吸盤をとり除くいくつかの方法を紹介しましょう。

  • 包丁の刃を軽く当てて足の付け根から足先に向けてこそげとる。
  • 熱を加えてよい場合は、お湯で軽く茹でるととりやすい。
  • 足に塩をふり、まな板でコロコロしてしごくと環がとれる。
  • キッチンバサミでチョキチョキ切りとる。

まとめ

酒の肴として定番ともいえるスルメのことをアタリメともいいますよね。

スルメは昔から儀式や結納の際の縁起物として使われてきました。

 

室町時代、お金のことを「お足」といっていましたが、イカは足がたくさんあるので縁起がよいとされてきたのです。

けれども、スルメは「お金を掏る(スル)」などマイナスのイメージにもつながるので、そのイメージを嫌って「アタリメ」と呼ぶようになったということです。

あなたはどんなイカ料理がお好きですか?

(ライター sensyu-k)